役人の 子はにぎにぎを よく覚え
居候 三杯目には そっと出し
四杯目 あたりうかがう 居候
この3つは古くからある有名な川柳です。
俳句も川柳も、コトバはともに基本的には五・七・五。俳句が季語を重視しているのに対し、川柳は季節よりなにより専ら滑稽、風刺に力点を置いています。
川柳からは、極めて具体的に、庶民の暮らし、心情、とりわけ飾らない本音をうかがい知ることができます。
この平成の世にも、人々の、赤裸々な心の発露、ウップンばなしなど、いわゆる“声なき声”が聞こえてきて、微苦笑、哄笑から艶笑まで、世相を反映する川柳は、とにかく笑いの文芸と言えるでしょう。
小生はこの庶民の味方である川柳を長い間集めてきました。ここにいくつか紹介して、クスッとお楽しみいただければと思います。
■加齢現象編
耳遠く オレオレ詐欺も 困り果て
忘れぬよう メモした紙を また探す
金ためて 使う頃には 寝たっきり
寝て練った よい句だったが 朝忘れ
立ち上がり 用を忘れて 立ちつくし
カラスでも 知ってるゴミの 日を忘れ
備忘録 置いたところを 忘れてる
メモ帳の しまい場所にも メモが要る
クラス会 思い出すまで 握手する
アレどこだ アレをコレする あのアレだ
物忘れ メモした紙も 見当たらず
少ないが 満額払う 散髪代
デジカメの エサは何かと 孫に聞き
徹夜して 作ったファイルを 保存せず
■犬のポチ編(哀しいサラリーマンの家庭での唯一の癒しの存在)
帰宅して フロメシよりも ポチのエサ
喫煙は 隣のポチと 星眺め
父帰る 一番喜ぶ 犬のポチ
上司から もらったポチの 頭が高い
朝帰り 起きても来ない ポチと妻
ダイエット ポチと散歩で ポチが痩せ
■携帯のメール編
メール打つ 速さで仕事 なぜできぬ
メル友と 出会ってみたら わが主人
通勤の 車中は携帯 見本市
メール族 口より早く 指動く
メール打つ 速さで年が すぐ分かり
ヤングママ 片手でメールの 授乳かな
入浴中 夫の携帯 見るスリル
■子のしつけ編
マツタケは おいしくないよと 子に教え
運動会 抜くなその子は 課長の子
2才だろ ウニトロ選ぶな 卵食え
叱られて おねしょで返す かたき討ち
うちの子ら 回らぬ寿司を 不思議がり
あれほどに 塾に通って 普通の子
先輩と 気軽に呼ぶな 予備校で
じゃんけんで 負けた子供が パパと寝る
■番外編
会議中 眠気を飛ばす 着信音
ひと眠り した頃終わる 講習会
会議中 うなずく者ほど 理解せず
講習会 よく寝た人ほど 拍手する
寝不足を 午後の会議で 取り戻す
退社ベル 鳴ったとたんに 去る眠気
駅弁の フタから食べる 戦前派
■極み付け
大男 総身に知恵の 廻りかね
小男の 総身に知恵も 知れたもの
H27年4月